「就労自立給付金」とは,生活保護をやめる廃止時にもらえる支援金制度。受給中の仕事で,収入認定で相殺された給料が一部もどってくる
生活保護の受給を「廃止」に移行するタイミングで,
廃止後の自立を支える目的で,お金がもらえる制度がある。
それが「就労自立給付金(しゅうろう・じりつ・きゅうふきん)」。
生活保護が停止になるより前の,直近6ヶ月間において
「仕事で働いて得た収入」が多ければ多いほど,給付金も大きくなる。
どういう制度なのか,詳しく下記で説明。
(1)まずは,公式の通知を見てみよう
この給付金制度は,厚生労働省が2014年から実施している。
改正・生活保護法という法律の施行に伴い,給付金制度も生まれた。
その件に関する公式の書類が,PDFで公開されている。
下記のPDFを読んでみよう。
厚生労働省の通知PDF:
「生活保護法の一部を改正する法律の一部施行について(平成26年1月1日施行分)」
詳細版⑪ 参考資料2 生保法施行通知(平成26年1月1日施行分)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2014/01/dl/tp0120-12-04d.pdf
生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号)については、
平成25年12月13日に公布されたところである。このうち、生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第34条の改正規定(後発医薬品の使用促進に関する部分に限る。)及び法第60条の改正規定については、
平成26年1月1日から施行することとしている。ついては、これらの改正について、下記事項について御了知の上、
管内保護の実施機関をはじめ、関係者、関係団体等に対し、
その周知を図るとともに、その運用に遺漏のないようにされたい。・・・
(給付金の金額の計算方法について)
保護廃止直前に保護停止期間(月単位)がある場合には,
算定対象の6か月に含めない。保護廃止直前6か月(日割で保護費を算定している期間)以内に、
一か月に満たない期間がある場合、その期間を一月とみなして計算する。
また,この制度について,政策の面から
善し悪しを詳しく解説した, 優れた資料もある。
関西学院大の人による,制度の詳しい解説PDF:
「生活保護と就労支援」
http://www.kwansei.ac.jp/s_economics/attached/0000067000.pdf
「生活保護受給を開始した後」の政策を「事後の政策」と呼ぶこととする。
事後の政策とは、既に生活保護を受給している稼働能力層に、保護なしで自立できるよう促すものである。
言うまでもなく、こうすることで「貧困のわな」を解消させることができる。
現行で行われている事後の政策としては、就労自立給付金が挙げられる。
就労自立給付金制度とは,
生活保護受給期間内に獲得した就労収入のうち、
"本来は「最低生活費+勤労控除」を超える部分として給付額が減額される部分" の一部を, 仮想的に積み立てることを認め、
将来, 安定就労の機会を得て生活保護から脱却する際に、
その仮想的に積み立てた資金を支給する制度である。
この制度は、生活保護受給者の労働収入の大半が生活扶助額の減額により相殺される「働き損」の仕組みを改善し、
本来であれば減額される部分の生活扶助額の積み立てを仮想的に認め、
生活保護から脱却するインセンティブを強化するものである。
また、生活保護からの脱却直後の不安定な生活を,給付により支え,
再保護にいたることを防ぐ効果も期待されている。
・・・
この就労自立給付金の問題点は、
自立時に支給される積立金の上限額が10万円に過ぎず、
生活保護脱却直後の不安定な生活を支え、再保護にいたることを防ぐには力不足な点である。
また月々に認定される積立額も過少で、働き損の仕組みを改善する効果は小さい。
以上から、現時点ではこの就労自立給付金制度が「貧困のわな」の問題を解消するとは言い難いと言える。
上記は,どちらも詳しい解説だ。
読んでもピンと来ないかもしれない。
以下で,わかりやすく説明し直してみる。
(2)わかりやすく言うと,生活保護の廃止時に,お金がもらえる制度
就労自立給付金は,生活保護を本格的に「やめるタイミング」で,数万円の援助をもらえる仕組み。
もらうための要件としては,生活保護の「停止」ではなく「廃止」が必要。
就労自立給付金が創設されました。 | 生活保護を学ぼう
http://seikathuhogomanabou.com/syuurouziritukyuufukin/
- 原則、生活保護廃止直前に受給者からの申請があること。
- 生活保護を廃止すること。
なぜ,この給付金がもらえるのか?
目的・理由は,「自立をうながすため」だ。
また保護に逆戻りしないように支えること。
就労自立給付金 松山市ホームページ
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/fukushi/shakai/hogo/syuuroujiritu.html
- 生活保護から脱却すると、税・社会保険料等の負担が生じる
- 生活保護を脱却するためのインセンティブを強化するとともに、脱却直後の不安定な生活を支え、再度保護に至ることを防止することが重要。
- このため、保護受給中の就労収入のうち、収入認定された金額の範囲内で別途一定額を仮想的に積み立て、安定就労の機会を得たことで保護廃止に至った時に, 支給する制度(就労自立給付金)を創設しました。 【施行期日:平成26年7月1日】
この給付金は,2014年に制定された,わりと新しい制度だ。
改正生活保護法による。
生活保護制度を見直し : 社会保障ナビ : yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=79262
- 自立支援策の柱は、「就労自立給付金制度」の創設だ。
- 仕事に就いて生活保護を脱却できた時に、まとまった給付金を支給するという内容だ。
- 就労自立給付金制度は、勤労収入の一定割合を積み立てたとみなす仕組みも導入し、保護を脱した時にまとめて支給する。
就労自立給付金(スーツ代、携帯購入費、連帯保証費、就労活動促進費等)を利用する世帯は、ほとんどない模様 100世帯中1世帯あれば良いほう [転載禁止]©2ch.net [647894261]
http://fox.2ch.net/test/read.cgi/poverty/1448479224/l10
- 改正生活保護法では、収入認定した収入を「仮想的に積み立て」ておき、 生活保護から脱却したときに「就労自立給付金(上限額は単身世帯で10万円)」が支給されることとなった。
(3)給付金額の計算・算出方法と,対象月となる期間の決め方
もらえる金額の決め方は,
- 「いままで,働いて得たお金を,どれぐらい市役所に返納してきたか?」
というのがネックになってくる。
たくさん返納してきたならば,たくさん還付金がもらえるというわけ。
なので,いわば市役所への「返納額の中から積み立て」をしてきたようなもの。
(この意味については,下記でさらに詳しく説明します。)
「生活保護法の一部改正案」を考える / 岩田正美 / 社会福祉学 | SYNODOS -シノドス-
http://synodos.jp/welfare/4302
- 就労の自立を促すため、就労自立給付金を創設する。
- 保護受給中の就労収入は, 勤労控除として一定を控除されるが、それ以外の部分は生活保護費から差し引かれる(つまり、働いただけ保護費は減る)。
- この差し引かれた部分から, 一定額を仮に積み立てたと考えて、廃止にまで至ったときに、支給しようとするわけだ。
生活保護の就労自立給付金について教えて下さい - 生活保護 解決済 | 教えて!goo
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/8883897.html
- 保護受給中の「収入認定額」の範囲内で,仮想的に積み立て、保護脱却時に一括支給
就労自立給付金制度参考(東京都)|生活保護で生活を立て直そう
http://ameblo.jp/seikatsu-hogo/entry-11815733357.html
- 「生活保護受給中の就労収入」のうち、 最大6ヶ月間に収入認定した一定額(最大30%)を、 安定就労の機会を得て保護を脱却する際に支給します。
- 収入申告して、収入と認められた分から 最大で30%の積み立てを福祉課でしてくれる。
また,「働いて得た収入を市役所に返納した」のがいつだったか?
という対象月については,
生活保護が停止になる前の半年間を対象としている。
廃止した月を含めて,さかのぼって半年間を見るわけなのだが,
この中には停止中の期間が含まれないため。
弁護士ドットコム -生活保護:就労自立給付金の取扱い判断について
https://www.bengo4.com/shakkin/1047/b_324021/
- 算定対象期間は、生活保護廃止日の属する月から遡った6ヶ月の期間
- 例えば、生活保護廃止日が平成26年7月10日であれば、算定対象期間は2月~7月
ここで,還付される金額には上限が決まっており,
一人暮らしでは,もらえる上限が10万円。
2人以上なら15万円が上限となっている。
さいたま市/就労自立給付金について
http://www.city.saitama.jp/002/003/002/p041075.html
- 給付金の上限。
- 単身世帯の場合10万円、世帯員が複数いる世帯の場合15万円となります。
- 新たに職に就いた場合や、現在得ている就労収入が増加した場合等で、保護を必要としなくなった際には、生活保護廃止後に就労自立給付金が受給できる可能性がありますので、担当員(ケースワーカー)にご相談ください。
給付金額の計算・算出の例:
社会福祉士、就労自立給付金制度について就労自立給付金制度の過去問の解... - Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11140995776
- 例えば、認定収入額が10万円で、保護を脱却するまでの期間を3ヶ月と想定すると、認定収入額の3割を積み立てることになります。
- そして、保護脱却時に9万円を支給することになります。
(4)生活保護の受給中に,仕事を始めて収入を増やし,停止・廃止に至るまでの流れ
給付金をもらうまでの道のりを,時系列で考えてみる。
まずスタート地点から考えてみよう。
「病気などが原因で,仕事ができず,収入を得る手段がない。
しかも,貯金も持ち金も,なにもかも使い果たした。
だからあと一カ月以内に飢え死にしそうだ・・・。」
そこまで来て,ようやく生活保護が受給される。
これは,憲法のもとに保障された全国民の権利である。
生活保護を受給している間,医療費が無料だ。
なので,病気の回復や休養などに専念できる。
ちなみにこの間,貯金は認められない。
生活保護の受給者が保有できる貯金・預金の上限はいくらか?のまとめ。申請時は半月分のみ許可,受給中は良識の範囲で可だが要相談。高校生に例外あり - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20150424/p1
- 生活保護の受給が半月後に開始する時点で,まったくスッカラカンであることが要求される。
- なぜなら生活保護は「最後の手段」であり,貯金というセーフティネットにもいよいよ頼れなくなった人が申請するものだから。
うつ病の原因は「頑張り過ぎ」なので,「頑張って」はNG。治し方は頑張らないこと - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20140429/p2
- うつ病を治すためには,「頑張らないこと」が必要だ。
- 実際に,「頑張れない」ほどまでに, 頑張りすぎたために病気になったのだから。 そんな人がもっと頑張ったら,病気を悪化させるだけ。
うつ病のまま働き続けるのはNG。休職して仕事から離れ,復職に向け十分に療養すべし - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20150617/p3
- つらいまま仕事を続けていると,良い事は一つもない。 骨折したのに走り続けるようなものだ。 働き続けることで,事態はどんどん悪化してしまい,もっと悪い結果を招く。
そして時がたち,ふたたび仕事で収入を得られるぐらいまで心身が回復する。
最初はフルで働けないので,パートタイムで短時間の仕事から。
そこで得たわずかな収入は,「就労によって得た収入」として毎月,市役所に申告する。
市役所は「収入認定」という手続きを経て,
生活保護の支給額から,ほぼ同額を減らす。
もし減免しないと,多く受給されていることになり,それは不正受給ということになる。
ただし「勤労控除」の認定をすれば,
生活保護費 + 仕事の収入 + 生活保護費の減免 + 控除額
で,トータルの収入は1~2万円ほどプラスになる。
この間も,やはり貯金はできない。
そして,あとあと「就労自立給付金」をもらうためには,
このタイミングで市役所にいくら返納していたのか?が重要になる。
「働いているけど, 生活保護が停止になっておらず,
自分の給料を市役所に返している状態」がキーポイントになるのだ。
この期間が6カ月続いているかどうかで,給付金の算出対象の長さも変わる。
この「返している金額」が多ければ多いほど,給付金の金額も多くなる。
だから,言い換えれば,
「返している金額」の中から,将来もらえる給付金を「積み立てている」のと同じことだ。
「市役所に返す金額」のうち,ぜんぶが消えてしまうのではなく,
一部分だけは市役所が預かったままで,あとから自分に戻してくれるわけだ。
生活保護の受給中に,アフィリエイトの副収入を得られるか?について - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20131128/p1
- 生活保護の受給中に, アフィリエイトなどで稼いだネット収入のお金は ちゃんと申告して,受給される保護費から減免してもらう必要がある。
- そうしないと, 不正な収入隠しになる。確定申告もすること。
仕事の収入申告で,生活保護費を減らさない方法。「勤労控除」で一部返還してもらえる - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20150814/p1
- 収入を正直に申告する際に,「勤労控除」の認定をもらえれば 1〜2万円は確実にプラスにできる。
- つまり,「給料の一部を自分の手元に残せる」ということ。 交通費などの経費も認定してもらえる。
Amazonアフィリエイトの副収入は,所得として申告する義務有り。ギフト券でも銀行振り込みでも。 - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/20131210/p2
- 副収入の額が一定額を超えている場合, 税法上の特定の分類の所得として正直に申告する必要がある。
- Amazonなどのアフィリエイトの収入も同じであり, ギフト券つまり金券でもらおうが, 銀行振り込みであろうが, 所得であることには変わりがない。
そして仕事が順調になってくると,働いて得た収入が増えて,
生活保護をもらわなくても,とりあえず生きていけるようになる。
こうなると,生活保護は「停止」となる。
むこう6ヶ月は収入が続く見込みであれば,簡単に停止に移行できる。
停止になると,生活保護の医療扶助がなくなり,
自分で健康保険に入り直す必要がある。
停止の状態は,最長で半年まで続けられる。
もしもこの期間中に体調を壊したら,すぐに停止をとりやめ,
生活保護を再開できる。
生活保護の「停止」の際に必要な国民健康保険の手続き方法や,注意点・要件について - 日常生活と暮らしのメモブログ
http://seikatsu-kurashi.hatenablog.jp/entry/2016/01/03/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%AE%E3%80%8C%E5%81%9C%E6%AD%A2%E3%80%8D%E3%81%AE%E9%9A%9B%E3%81%AB%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E5%9B%BD%E6%B0%91%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA
- 生保を「停止」したら,すぐに健康保険に入ること。
- 停止の時点で,医療の保険がなくなる。 日本では「国民皆保険」制度なので,何らかの保険にすぐに入るべき。 ブランクが生じないように,生保停止の日,すぐ別の保険に入りなおそう。
ここで,停止の期間中にトラブルが何もなく,
仕事も体調も順調で何とかなりそうであれば,
めでたく「生活保護の廃止」となる。
ケースワーカーさんの判断で,停止を数カ月続けた後で
「じゃあ廃止にしましょう」となり,生活保護との縁が切れる。
このタイミングで,廃止になる直前に,「就労自立給付金」を申し込む。
そして,生活保護が廃止になってから,廃止の祝い金のような形で
給付金が支給される。
もらった給付金は,仕事のためにスーツを買ったり,
自分で払っている医療費に充てるなどして,自立に役立つ用途に使ってね。
ということになっている。(実際には何に使ってもとがめられないが…)
そして,その具体的な金額を決める際には,
生活保護が停止になるよりも前の時点で
「自分が働いて得た収入を,市役所にいくら返していたか?」
つまり,「市役所にいくら積み立てていたか?」に応じて額が決まるというわけだ。
そして,めでたく生活保護が廃止になり,
年金保険料も自分で支払うようになると,
就労自立給付金がもらえる。
こうして,真の自活ライフが始まる・・・。
以上が,生活保護の受給中に仕事を始めて,
廃止のタイミングで給付金をもらうまでの流れとなる。
踏むべきステップが理解できただろう。